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君を追うもの(8) [狩人のものがたり]

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山見は全力で追いかけた。
目視は出来ないが彼女がどこに移動しているのかはわかっている。
移動スピードは上がっているものの追いつけないものではない。

向う先には人声がする、人ごみに紛れるつもりか。

「人がいようがいまいが追跡には問題ないぞ」

紛れた所で追跡は可能だったが出来るならその前に捕まえておきたかった。
山見は角を曲がる前に遂に女と最大接近した。

「何だ?」

一見するとそれは塵に思えた。
ただ塵が舞っているだけに。
次に山見はそれが虫だと思った。
翼を広げて飛んでいる羽虫かなんかだと。
しかしそれは有り得ない物を見た時の心の防御が見せた虚構だった。

それは爪の大きさくらいの人間が風に舞って飛んでいる姿だった。
髪のやや長い女がこちらを見ながら風に舞っている姿だ。
表情までは分からないが笑っているようにも見える。

山見は思わず立ち止まった。
近づいても存在を確認出来ない理由が分かった、
相手が小さな姿で対していたからだ。
もしかしたら最初から見えていたかも知れないが認識出来ていなかったのだろう。
しかもその状態は意志の力で行っている、
自身を縮めるだけでなく物体を小さくする事が出来る能力者だ。
金庫もそうやって持ち出したわけだ。

「・・・問題はそれを一瞬でやってのける事だ」

金庫を一瞬で元の大きさに戻し追跡者の頭上に落とし、
ゴミ箱の蓋を縮め、投げた瞬間元に戻す、
彼女はそういった武器を持っているかも知れない。
さっきは苦し紛れだったが冷静になった今度はそうはいかない、
恐らく自身の姿を認識された事も分かっている筈、次の攻撃は命のやり取りになる。

だが山見は追い続けた。

-続く-



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