髯劇 [ここ掘れ、トシハル]
ある夕暮れの事です。
トシハルという1人の若者が佇んでおりました。
足早に行き交う人の流れを見ながら時々溜息をついてます。
そこに1人の老人がやって来ました。
長く蓄えた白い髯を揺らしながらトシハルに近づいてきます。
そしてトシハルの横に並ぶとそのままじっとしているのでした。
トシハルは一銭の金も無く今日の食事さえ事欠いており途方に暮れていたのですが、
老人の長い髯を見ている内に、思いっきり引っ張ったらさぞ愉快だろうと考えだしました。
すると老人に髯が気になって気になって仕方ありません、
そこでトシハルは意を決して頼む事にしました。
「ぶしつけですが貴方の髯を引っ張りたいのです」
トシハルはさぞや老人が怒るだろうと考えていたのですが老人は眉1つ動かさずに承諾しました。
そうすんなりいくと逆に躊躇するトシハルでしたが老人の髯を掴んで思いっきり引っ張りました。
老人は「ぎゃひぃぃぃ」と叫んで暴れますがトシハルは構わず引っ張り続けます。
「うぎゃーーーうぎゃーーー」
老人は慌てふためき逃げようとしますがトシハルは髯を掴んで離しませんでした。
「なにをするんじゃー!なにをするんじゃー!」
実は先ほどのやり取りは全てトシハルの妄想でした。
老人の罵声でトシハルもそれはなんとなく理解し始めたのですが、
今更止めた所で奇行の事実が無くなるわけでも無いので引っ張り続けていたのでした。
やっとの思いでトシハルを振り払った老人は貴様は地獄行きじゃーと罵って逃げて行きました。
トシハルは老人の髯の感触を思い出しながら特に楽しくも無かったなとつぶやくのでしたが、
しかしその後も長い髯を見ると引っ張りたくなるのでした。
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泡ヒゲはダメよ [ここ掘れ、トシハル]
ある夕暮れの事です。
トシハルという若者が途方に暮れておりました。
そこへ白髪の老人に扮した仙人が尋ねました。
「お前は何を考えておる?悩みがあるのなら私が相談にのってやろう」
トシハルは深い深い溜息をつくとこう言いました。
「ビール・メーカーって、何でCMにビールの泡ヒゲ使いたがるのか・・・」
「・・・」
「ビールの泡ヒゲはビールの旨さの証明じゃないのに・・・」
「うむ、お前さんの言う通りじゃ、ビールの泡ヒゲは旨さの印ではない」
「やっぱり!」
「第一、泡ヒゲはどう映してもマヌケにしか映らん」
「ですよねー、マヌケですよねー。お爺さん有り難う、僕、なんかスッキリしました」
「そ、そうか、そうか、それは何よりじゃ」
「いやーずっと心に引っかかってて・・・でもこれからはやってやりますよ」
「やるって何をじゃ?」
「マヌケな泡ヒゲの奴等を思いっきり笑ってやります」
そう言うと呆気に取られた仙人を残しトシハルは晴れ晴れとした表情で去りました。
最近の若者は複雑だと仙人は思いました。
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次場所はデジタルで [ここ掘れ、トシハル]
ゆとり世代のトシハル [ここ掘れ、トシハル]
瞬間、希望、重ねて [ここ掘れ、トシハル]
ある夕暮れの事、1人の若者が黄昏ておりました。
若者の名はトシハル、彼は日々の食べる物も欠く有様、
一体これからどうしたものかと考えあぐねておりました。
そこへ1人の白髪の老人が現れ、トシハルの顔を覗き込む様にして言いました。
「お前さん何を考えておる?」
トシハルは言いました。
「実は金が無くて今日食べる物さえ手に入れない有様。
どうしたものかと考えていたのです」
すると老人は地面を指差しながら、
「では夜中に来てお前さんの影の腰の部分を掘ってみるがよい」
と言い残して去っていきました。
トシハルは半信半疑ながらも何かあるやも知れぬと一縷の望みを託し、
老人の言った部分をジッと眺めていました。
すると再び老人が現れこう言いました。
「お前さんがそこでいつまでも頑張ってたら、わしがネタを仕込めないだろ、
空気を読め、空気を!!」
トシハルは慌てて逃げ出しました。
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明日か、来日 [ここ掘れ、トシハル]
ある夕暮れの事、1人の若者が黄昏ておりました。
若者の名はトシハル、彼は今日も食べる物も欠く有様、
一体これからどうしたものかと考えあぐねておったのです。
そこへ1人の白髪の老人が現れました。
「お前さん何を考えておる?」
トシハルは、こんな時に話しかけられたので非常に鬱陶しく思ったので、
少し困らせてやろうとこう言いました。
「…実は彼女が出来なくて悩んでいる。
こんな世の中だ、美人の彼女でもいれば人生も潤うのにな」
すると老人は少し考えてから、
「では夜中に来てお前さんの影の腹の部分を掘ってみるがよい」
と言い残して去っていきました。
トシハルはさぞかし困るだろうと思っていたのでこの答えには驚きました。
しかしながら彼の言う事を真面目に受け取るのもどうかと思い、
そのままほって置いてしまったのです。
その翌日、通りかかった電気屋の街頭テレビで、
女子大生が生き埋めされそうになったとのニュースを見ました。
トシハルは、まさかなと首を振りながら去って行きました。
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穴の造りしもの [ここ掘れ、トシハル]
ある夕暮れの事です。
1人の若者が黄昏ておりました。
若者の名はトシハル、
彼は昨今の不況の波で今日食べる物も欠く有様、
一体これからどうしたものかと考えあぐねておりました。
そこへ1人の白髪の老人が現れこう言いました。
「お前さん何を考えておる?」
だけどトシハルは、こんな時に話しかけられたので非常に鬱陶しく思い、
暫し考えてからこう言いました。
「ニンテンドーDSが買いたいけど手持ちがなくて悩んでいたんだ」
すると老人は意外そうな顔をしてから、
「そうか…では夜中に来てお前さんの影の頭の部分を掘ってみるがよい」
と言い残して去っていきました。
トシハルは半信半疑ながら老人の言うとおり夜中に掘ってみました。
すると中から新品のニンテンドーDSが出てきました。
トシハルは呆然としながらニンテンドーDSを眺めてましたが、
持ち帰ると翌日中古ソフト屋に五千円で売り払いました。
お金を手にしながらトシハルは、
「しまった、ニンテンドーDSiLLと言うべきだった。もっと金になったのに」
と残念がったそうです。
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途方に暮れた午後はヤバイゼ [ここ掘れ、トシハル]
ある夕暮れの事です。
トシハルという名の若者が途方に暮れておりました。
そこに如何にも仙人の風貌の老人が現れ彼にこう尋ねました。
「お前は何を考えておる?」
トシハルは答えます、
「一文無しで食べる物にも窮する有様、どうしたものかと悩んでたところです」
すると老人は暫し考えた後、トシハルの影の頭の部分を杖で指し示して言いました。
「今夜、ここを掘って見るが良い。お前さんの悩みは解決するだろう」
そして深夜、疑いながらもトシハルは老人の言う通りに穴を掘りに来たのですが、
現場はカンカンに照明が焚かれ、大勢の人だかりでごった返しており大変驚きます。
よく見ると夕刻出合った老人の姿もありました。
彼はトシハルを見つけるとよう来たよう来たと言いながら本を手渡し言いました。
「実はわしらはドキュメンタリー番組を専門に作っている製作会社でのう、
おまえさんが一夜にして大金持ちになる姿を収録したいわけだ。
で、今渡したのが台本。夜間撮影で顔がしっかり映る様これからメイクするから、
その間にセリフをしっかり覚え込むんじゃぞ。
でもまあ、トチッても何度かやり直しも出来るし、もし夜が明けてしまっても、
ブルーフィルターで夜間にみせるから、その辺はリラックスして良いぞ、ワッハハ、
オ~イ、スタッフゥーーー!!」
渡された台本には大金を得てトシハル狂喜乱舞するとありました。
「…ドキュメンタリーじゃないじゃん…」
TVの美談は決して信じるまい、そう心に誓うトシハルでした。
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人生牧場 [ここ掘れ、トシハル]
ある夕暮れの事です。
1人の若者が黄昏ておりました。
若者の名はトシハル、
彼は今日食べる物も無くどうしたものかと考えあぐねていました。
そこへ1人の白髪の老人が現れ、トシハルの話を聞くや、
「夜中に来てお前さんの影の腹の部分を掘ってみるがよい」
と言い残して去っていきました。
トシハルは半信半疑ながらさてとり他に手段もなく、
夜中になると老人の言うとおりそこを掘ってみました。
しかしいくら掘っても何も出てきません。
白々と夜が明けてくるに至り、トシハルは騙されたと怒り穴から出て行こうとしました。
しかし掘った穴は深く、飛び上がっても穴の淵に手が届きません。
「墓穴を掘るとはこのことか」
そうつぶやいた後トシハルは笑い出しました。
ひとしきり笑うと彼は、手にスコップがあることに気づきます。
彼は再び立ち上がり、黙々と横穴を掘り出しました。
後日、トシハルを見かけた者がいましたが、それきりということです。
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