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小銭一掃の幸福論 [ウリィィィ先生のチィィィ散歩]

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夏も終わりと惜しんでいたら猛暑がそのままでビックリしているウリィィィ先生だ。

一日外出していると金を使う、
ウリィィィ先生はいつもズギャズギャ現金主義だ。
だから小銭入れの中は何かしら小銭があるが、
だが極たまに支払いが終って小銭が綺麗さっぱり無くなる時がある。
1円5円10円50円100円がすっかり消え去る時が。
こういう偶然は早々無いから感動する。
このカードでは味わえない幸福、
現金主義だから味わえる至福の瞬間だ。

こういう場合ウリィィィ先生はさっさと帰宅する事にしている。
この幸福感を失わないようにぃ。

小さい話であるが小さな幸福でもそれは幸福のうちであるぅ。



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二人いる! [狩人のものがたり]

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その日の午後、交番に勤務していた高峰巡査は奇妙な光景を目の当たりにする。
ことの始まりはある男を見たことだった。

真夏に黒い長袖のシャツを着た男が交番の前の広場に立っていた。
炎天下に身じろぎもせず空虚を見詰めたままただひたすら立ち続けている。
その一種異様な菜雰囲気に周囲の人間は近寄ろうとせず遠巻きに見ている、
特に何をするわけでもなくまた交番の前でもあったので高峰も同様にしていた。
その時だ電話が鳴ったのは、相手は近くのマンションの住人からで、
「3階の部屋から誰かが争っている音がする」というものだった。
高峰はその黒シャツの男が気になっていたので同僚に監視を頼むと問題のマンションに向った。

ものの5分で到着すると電話の主が待っていた。
「さっきまで激しい物音があったんだけど・・・」
高峰が到着する直前に物音が止んだらしい、取り合えず男の案内で3階に行く。

「どの部屋ですか?」
「あの奥の部屋だと思うんだけど・・・」

高峰がその部屋に近寄ろうとした瞬間、扉が開き中から人が出て来た。
高峰は激しく動揺した、出て来た人間は先程交番の前にいた男にそっくりだったからだ。

男は高峰の警官の制服を見るやそのまま逃走した。

「待てーっ」
高峰は男を追った、追いながら無線で同僚を呼び出した。
「あの男はどうしているっ」
同僚の話では黒シャツの男はあれからもずっと広場に立ち尽くしたままだという、
高峰は職務質問を理由に交番で確保するよう命令した。

一方逃げている黒シャツの男は余り運動は得意でないみたいだった、
階段を下りる足音が近くなっており曲がり角では黒シャツの背中が見えている、
1階のところで黒シャツの男はバランスを崩して転んでしまった。

確かに目の前に黒シャツの男はいた、だが転んだと同時に突然視界から消え去ってしまった。

忽然と男は消えた、高峰の目の前で。
足音も消えマンションはまた静寂を取り戻している。
無線で同僚から男を確保したとの連絡が入る、
何か理由をつけ自分が戻るまで引き止めるよう頼んだ。
そして高峰は男が出て来た部屋に戻った。

その部屋には若い男の死体が1つあった。
凶器は死体のそばに落ちていた金属製のバット、
後頭部を一撃、周囲には血が飛び散っていた。
凶器から出た指紋はこの部屋の住人のもので通報者の証言では、
高峰が見た黒シャツの男がその住人だった。

マンションの監視カメラの映像によれば住人が騒ぎを聞きつける数分前、
若い男がその部屋に訪問している、
それから高峰が駆けつけるまで間出入りした者は無い。
映像は黒シャツの男が逃げ出した所も鮮明に捉えてた。

問題はその部屋の住人が事件発生前から交番の前にいたということだ。

一応死んだ男について尋ねたが知らないと答えたきり黙ってしまう。
「帰っていいですか?」
「ええ、ただ貴方の部屋から死体が出てきましたので調査の為部屋は出入り出来ません」
「分かりました暫くホテルに身を寄せます、勿論居場所は知らせた方がいいですよね?」
そう言うと黒シャツの男は立ち上がった。
その際何気に膝の辺りの砂埃をはらっているのを高峰は見た。
思い返せば追っていた黒シャツの男は消える前に転んでいる・・・

もしこの男が高峰が追っていた黒シャツであるなら、
交番の前には居なかった事になり目の前の男は存在しない事になる。
交番の前にいた男の存在を認めるなら高峰の追った男とは関係がなくなってしまう。
もしこの男が高峰が追った男であるためには、
全く別の場所に同じ人物が同時に居た事を立証しなくてはならない・・・

立ち去る黒シャツの男に高峰は声をかけた。
「何度か連絡する事になると思います、岩代さん」
岩代は無言で頷き去って行った。
その後で高峰は床に落ちている砂埃を丁寧に拾った。
それがマンション前の砂と一致しても黒シャツの男、岩代を追い詰める事は出来ないだろう。
ただ何かを納得しておきたいと高峰は思ったのだ。



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君を追うもの(10) [狩人のものがたり]

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山見はなるべく不審な動きはしないよう手に上着を持って近づいた。
そして軽く早足で最接近すると一瞬でその小さな女を上着の中に包み込むのに成功する。
「よし」
山見はなるべく潰さぬよう慎重に服を丸めた。
「ふふふ、子供の頃虫取りして捕まえたと思って開いてみたら影も形もなかったってあったな」
女は確かに服の中に捉えている確信があった、思わずニヤリとした山見、
だが急に眉をひそめた。
「・・・おかしい匂いが、違う匂いがする・・・」

服の中のさっきまでしていたあの女の匂いが薄れていくのを山見は察知した。
山見は慌てて匂いを嗅ぎ直した。
「違う!!女には違いないが全く別の女がこの服の中にいる!!」
山見がダミーをつかまされたと気づいた瞬間であった、
包み込んでいた女が元の大きさに戻ったのであろう、
服が重くなり女の手足が飛び出して来た。
「ううっ」
驚く山見の背後から女の声がする。
「貴方は嗅覚が優れているのね」
その声の主こそさっきまで追っていた女だった。

山見はどっと汗をかいた、そして相当ヤバイ状況になったと知った、
山見はとっさに上着の中の銃に手を伸ばした。

山見の肩にあの女の手が触れ同時に山見の体が縮んでいった。
そのショックで一旦は掴みかけた銃を落としてしまう、
改めて掴もうにもドンドン縮む体ではもはや手に取る事は出来ない。
このまま彼女の手のひらの中に捉えられるのか?
いや彼女の性格からしたら邪魔者は直ちに消す、つまり潰されてしまうのだろう、
風前の灯火とはこういうことかと山見は思った。

だが山見は助かった。

女の手のひらに包み込まれそうになる寸前に銃声が鳴り響いたのである。
周囲から悲鳴があがった、
そして上着に包まれ倒れている女が撃たれたと思われたのだろう、
大勢の人がこちらに集まって来る。
山見は元の大きさに戻っていた。

「危なかった」

銃に手を掛けた山見はセーフティを解除していた。
無論女を撃つ為でもあったが万が一の場合に暴発させる意味合いもあった。
山見は銃と上着を掴むとそのまま逃走した、既に女も逃げたらしかった。


まんまと逃げられてしまったが山見はその女の匂いを憶えている、
追跡は続行中である。

とある公園のベンチで鼻孔をくすぐる数千数万の匂いを今も選別し続ける山見の姿があった。



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君を追うもの(9) [狩人のものがたり]

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「危険ではあるが手の内が見えているポーカーなら勝ち目はある」
相手は小さな体、いやミクロのボディで舞っている。
それを知っているなら圧倒的有利!
「人か・・・」
まばらながら人が行き交う場に出てしまった、
さっきみたいに石つぶての雨を浴びせる攻撃は厳しい。
「なら捕獲という手がある」
標的としては撃ちにくいが捕まえるには好都合といえた。
虫を捕まえるのだと思えばいい、しかも虫より俊敏ではない。
山見は上着を脱ぎ宙を舞いながら逃げようとする女を追った。
ただ人目があるため目立たぬようゆっくりとであるが。

「もう少し、もう少しだ」
山見の前、約3m先に女はいる。

-続く-



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君を追うもの(8) [狩人のものがたり]

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山見は全力で追いかけた。
目視は出来ないが彼女がどこに移動しているのかはわかっている。
移動スピードは上がっているものの追いつけないものではない。

向う先には人声がする、人ごみに紛れるつもりか。

「人がいようがいまいが追跡には問題ないぞ」

紛れた所で追跡は可能だったが出来るならその前に捕まえておきたかった。
山見は角を曲がる前に遂に女と最大接近した。

「何だ?」

一見するとそれは塵に思えた。
ただ塵が舞っているだけに。
次に山見はそれが虫だと思った。
翼を広げて飛んでいる羽虫かなんかだと。
しかしそれは有り得ない物を見た時の心の防御が見せた虚構だった。

それは爪の大きさくらいの人間が風に舞って飛んでいる姿だった。
髪のやや長い女がこちらを見ながら風に舞っている姿だ。
表情までは分からないが笑っているようにも見える。

山見は思わず立ち止まった。
近づいても存在を確認出来ない理由が分かった、
相手が小さな姿で対していたからだ。
もしかしたら最初から見えていたかも知れないが認識出来ていなかったのだろう。
しかもその状態は意志の力で行っている、
自身を縮めるだけでなく物体を小さくする事が出来る能力者だ。
金庫もそうやって持ち出したわけだ。

「・・・問題はそれを一瞬でやってのける事だ」

金庫を一瞬で元の大きさに戻し追跡者の頭上に落とし、
ゴミ箱の蓋を縮め、投げた瞬間元に戻す、
彼女はそういった武器を持っているかも知れない。
さっきは苦し紛れだったが冷静になった今度はそうはいかない、
恐らく自身の姿を認識された事も分かっている筈、次の攻撃は命のやり取りになる。

だが山見は追い続けた。

-続く-



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君を追うもの(7) [狩人のものがたり]

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山見は電柱の陰に隠れた。
地面には彼女が投げたらしいポリバケツ型ゴミ箱の蓋が転がっている。
どこから投げけたのか?

「それよりも何故投げたかだ」

仮に蓋が当たっていたとしても怪我をする事もなかったろう、
最初の追跡者に対しての攻撃との差が大きい。

「不意を突いたからか」

苦し紛れの行動と見ていいだろうと山見が考えた時だった、
山見は女が遠ざかるのを知った。
「拙いっ」
山見が電柱の影から飛び出した時には女は相当先を進んでいた。
それはさっきまでのゆっくりした移動ではなかった。
自身が有利な時は相手を攻撃し、
少しでも不利と感じたら躊躇なく逃げる、
その切り替えの早さ、感情を挟まない行動には山見は感服していた。

-続く-



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君を追うもの(6) [狩人のものがたり]

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距離にして凡そ7m先に女はいる。
今は人気が無い通りだが騒ぎになるのは拙い、銃などの武器は使えない。
山見は草むらに居た時にポケットに入れておいた石を掴んだ。

「コントロールに自信は無いが・・・」

彼女がいると思われる付近に投げてみた。
手応えは無いが女はやや移動した。
少なくとも居る事は確か、攻撃が当たればダメージがあるとも思われる。
山見は移動したと思われる付近にまた投げた。

「また移動したか・・・」

大雑把とはいえ女の居場所に投げてはいるのだろう。
しかも素早くは動けないようだ、攻撃を恐れたか投げてないのに移動している。
山見は苦し紛れにしている事だが、
思っている以上にその攻撃は驚異になっているかも知れない。
山見は数個の石を一度に掴んだ。

「えいっ!」

石は塀や電柱に当たって地面に落ちた。
そしていくつかの石つぶてはゴミ箱に当たり、箱はひっくり返った。
と、その周辺に居たであろう彼女が空中に移動するのを感じた。

「何っ!?」

山見は必死でその方向を見た。
空中には何も無い、居るのは彼女だけだ、
その存在を確認出来るとしたら今だけかも知れなかったからだ。
最も彼女が透明でなければだが。

「どこだ!?」

その時空中から円盤状の平べったい物体が飛んで来た。
慌てて避ける山見、円盤状のそれは体をかすめて地面に転がった。
振り返ってみるとそれはゴミ箱の蓋だった。

箱が倒れた時に舞い上がったか?
いやいやそれはない、それ程勢いがあったわけではないからだ。
第一ゴミ箱が倒れたのは見ている、そうなったのなら分かる筈だ。
ならば彼女が投げたと考えるかだが、それは疑問が残る。

「一体どこから?」

-続く-



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君を追うもの(5) [狩人のものがたり]

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「よし」
意を決した山見は草むらの中に入り込んだ。
更なるおとりに追跡させる手も考えた、しかしそれでは二の舞になる。
自身で追えば危険は危険だが相手の位置はかなり正確に分かる、
正確な位置を把握出来ていれば攻撃を受ける可能性は下がる、
それに、
「やはり抜き取られていたか」
金庫は扉が開いており、そこからある物が無くなっていた、
このまま逃げ切られたらお仕舞いだ。

山見は金庫に顔を近づけた。
まるでこすり付けるくらいに顔を近づけたまま周囲をグルグル回る、
暫しその行為を続けた後に反対側の道路に出た。

山見は彼女がそこにいた確信を得た、既に場を離れているのも。
山見が道路に出ると彼女はやや先を進む、止まると彼女も止まる、
依然姿は確認出来て無いが接近した事で山見にはそれがよく分かった。
逃亡する気も無いのも理解していた。

-続く-



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君を追うもの(4) [狩人のものがたり]

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山見は気配を消しながらどうすべきか考えていた。
おとりとして先行させた人間があっさりやられてしまったからだ。

「彼女がどう捉えたかだ、追跡者本人と思っていれば油断するが・・・」

用心し離れた場所から指示していた為相手の正確な位置が把握出来なかった、
その所為でこの事態になったが命が助かったのも事実。

「さて・・・」

山見は相手の動きを探った。
既にその場から離れたようだ、倒れているおとりの周囲にはいない。
しかしそのまま移動しているのか近くで待っているのかは判断し辛い。

場を離れたのは反撃を想定しての事だろう、
少なくとも危険な状態は薄まった。
山見はおとりの倒れている現場に近づいた。

「・・・金庫か・・・」

現場には盗まれた金庫があり、
おとりの体は乗っかった金庫の重みで地面にめり込んでいた。

-続く-



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君を追うもの(3) [狩人のものがたり]

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山見は部屋を出て女の後を追った。
「移動する速度にムラがある、部屋の中では速く廊下では遅い」
階段から下を見た。
「だが階段を下りるスピードは速くなっているか・・・」
山見は頭を掻きながら階下へ向う。
「建物を出てからは歩き出したようだ、恐らく目立たない為だろうが」
山見は周囲を見回すと右方向に進んだ。
「だがおかしい、この辺りは人通りが少ない、だから出来るだけ人ごみを求めたくなるもの、
この女はもっと人通りの少ない場所を選んで向っている・・・」
女は追っ手を待ち伏せる気だと彼は判断した。

山見は女の後を追い続けた。
少し進むと左手に草むらがあった、古木もあり雑草が成人男子の腰くらいまで生い茂っている、
小動物は徘徊しても人が来る場所ではなかった。
「この中に入ったのは間違いないが・・・」
草が殆ど倒されておらず、誰かが通ったとは普通気がつかない。
「この中を進んで来る者があるとしたらそれは追っ手、女はそれを待っている・・・」
山見は覚悟を決めなければならなかった。

草むらに足を踏み入れる、中はぬかるんでおり足がやや沈んだ。
それでも歩けない事は無い、慎重に女の潜んでいる方に歩いて行った。
凄く近い場所にいると思われるのだが一向に姿が見えない、
それどころか身動きひとつしないのか何も音がしない。
自身が立てる音だけが大きく耳に響き、心臓の鼓動も聞こえて来る。

だが突然ポキリと木が折れる音が聞こえた。
と同時に頭上に大きな金属の塊が落ち、体が草むらに沈んだ。
ぐしゃりと潰れる音がした後、草むらは静寂を取り戻す。

すぐに起きようとしたが指の1本も動かせなかった。
何も見えず何も聞こえない、
気がつくと耳鳴りの様に聞こえていた心臓の音も消えていた・・・

-続く-



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