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君を追うもの(2) [狩人のものがたり]

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山見は言った。
「女はそのドアから入って金庫まで真っ直ぐやって来ている、
帰りもそのドアから出て行っている」
部屋にいた男はすぐ反論した。
「しかし俺は電話中もドアからは目を離さなかった、
誰かが何等かの方法で開けたなら気づくさ」
「・・・この部屋に入るにはこのドアしかない」
「その通り」
「金庫が消える前に開けたのは君だね」
「そうだ」
「消えた後に開けたのは他の部屋から来た誰かだ」
「多分それは私だ」
話を聞いていた男の内の1人が言った。
山見は話を続ける。
「結論を言えば女は部屋の前でドアが開くのを待っていた、
そして再び開いた時に出て行っている」
「まさか」
「そうまさかだ!」

「このビルには我々関係者以外誰もいない、外からは窓が見えるが見せかけだ。
非常階段も無く、屋上の出入り口も塞がれている。
一見して雑居ビルの装いをしたこの建物そのものが大きな金庫、
異物が入り込めばスグに分かるようにしてあるのに女は誰にも知られず入って来たのだ」
「つまりそれは・・・」
「その女を追うという事はその理由に触れる事になると考えてくれ」
「危険だからやめた方がいいと?」
山見は暫し考えたが、
「そういうわけにもいかないだろ。我々の仕事は金庫の中身を守る事、
万が一盗まれたら取り戻す事が仕事になる・・・ただ」
「ただ、なんだい?」
「女がどう考えてるかが問題だ」
「どうって?」
「このまま逃げ切ろうと考えてるのか、それとも、追跡されると考えているかだ。
前者であればいい、だが後者なら」
「後者なら?」
「我々は彼女をお待たせしているということだ」

-続く-



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