SSブログ

君を追うもの(3) [狩人のものがたり]

IMG_9554a.JPG

山見は部屋を出て女の後を追った。
「移動する速度にムラがある、部屋の中では速く廊下では遅い」
階段から下を見た。
「だが階段を下りるスピードは速くなっているか・・・」
山見は頭を掻きながら階下へ向う。
「建物を出てからは歩き出したようだ、恐らく目立たない為だろうが」
山見は周囲を見回すと右方向に進んだ。
「だがおかしい、この辺りは人通りが少ない、だから出来るだけ人ごみを求めたくなるもの、
この女はもっと人通りの少ない場所を選んで向っている・・・」
女は追っ手を待ち伏せる気だと彼は判断した。

山見は女の後を追い続けた。
少し進むと左手に草むらがあった、古木もあり雑草が成人男子の腰くらいまで生い茂っている、
小動物は徘徊しても人が来る場所ではなかった。
「この中に入ったのは間違いないが・・・」
草が殆ど倒されておらず、誰かが通ったとは普通気がつかない。
「この中を進んで来る者があるとしたらそれは追っ手、女はそれを待っている・・・」
山見は覚悟を決めなければならなかった。

草むらに足を踏み入れる、中はぬかるんでおり足がやや沈んだ。
それでも歩けない事は無い、慎重に女の潜んでいる方に歩いて行った。
凄く近い場所にいると思われるのだが一向に姿が見えない、
それどころか身動きひとつしないのか何も音がしない。
自身が立てる音だけが大きく耳に響き、心臓の鼓動も聞こえて来る。

だが突然ポキリと木が折れる音が聞こえた。
と同時に頭上に大きな金属の塊が落ち、体が草むらに沈んだ。
ぐしゃりと潰れる音がした後、草むらは静寂を取り戻す。

すぐに起きようとしたが指の1本も動かせなかった。
何も見えず何も聞こえない、
気がつくと耳鳴りの様に聞こえていた心臓の音も消えていた・・・

-続く-



↓宜しければ応援お願いします。
人気ブログランキングへ
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

君を追うもの(2)君を追うもの(4) ブログトップ
Copyright© ククルス・ドアンの丸太の美術館.All Rights Reserved

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。