君を追うもの(3) [狩人のものがたり]
山見は部屋を出て女の後を追った。
「移動する速度にムラがある、部屋の中では速く廊下では遅い」
階段から下を見た。
「だが階段を下りるスピードは速くなっているか・・・」
山見は頭を掻きながら階下へ向う。
「建物を出てからは歩き出したようだ、恐らく目立たない為だろうが」
山見は周囲を見回すと右方向に進んだ。
「だがおかしい、この辺りは人通りが少ない、だから出来るだけ人ごみを求めたくなるもの、
この女はもっと人通りの少ない場所を選んで向っている・・・」
女は追っ手を待ち伏せる気だと彼は判断した。
山見は女の後を追い続けた。
少し進むと左手に草むらがあった、古木もあり雑草が成人男子の腰くらいまで生い茂っている、
小動物は徘徊しても人が来る場所ではなかった。
「この中に入ったのは間違いないが・・・」
草が殆ど倒されておらず、誰かが通ったとは普通気がつかない。
「この中を進んで来る者があるとしたらそれは追っ手、女はそれを待っている・・・」
山見は覚悟を決めなければならなかった。
草むらに足を踏み入れる、中はぬかるんでおり足がやや沈んだ。
それでも歩けない事は無い、慎重に女の潜んでいる方に歩いて行った。
凄く近い場所にいると思われるのだが一向に姿が見えない、
それどころか身動きひとつしないのか何も音がしない。
自身が立てる音だけが大きく耳に響き、心臓の鼓動も聞こえて来る。
だが突然ポキリと木が折れる音が聞こえた。
と同時に頭上に大きな金属の塊が落ち、体が草むらに沈んだ。
ぐしゃりと潰れる音がした後、草むらは静寂を取り戻す。
すぐに起きようとしたが指の1本も動かせなかった。
何も見えず何も聞こえない、
気がつくと耳鳴りの様に聞こえていた心臓の音も消えていた・・・
-続く-
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2012-05-03 23:59
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