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君を追うもの(10) [狩人のものがたり]

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山見はなるべく不審な動きはしないよう手に上着を持って近づいた。
そして軽く早足で最接近すると一瞬でその小さな女を上着の中に包み込むのに成功する。
「よし」
山見はなるべく潰さぬよう慎重に服を丸めた。
「ふふふ、子供の頃虫取りして捕まえたと思って開いてみたら影も形もなかったってあったな」
女は確かに服の中に捉えている確信があった、思わずニヤリとした山見、
だが急に眉をひそめた。
「・・・おかしい匂いが、違う匂いがする・・・」

服の中のさっきまでしていたあの女の匂いが薄れていくのを山見は察知した。
山見は慌てて匂いを嗅ぎ直した。
「違う!!女には違いないが全く別の女がこの服の中にいる!!」
山見がダミーをつかまされたと気づいた瞬間であった、
包み込んでいた女が元の大きさに戻ったのであろう、
服が重くなり女の手足が飛び出して来た。
「ううっ」
驚く山見の背後から女の声がする。
「貴方は嗅覚が優れているのね」
その声の主こそさっきまで追っていた女だった。

山見はどっと汗をかいた、そして相当ヤバイ状況になったと知った、
山見はとっさに上着の中の銃に手を伸ばした。

山見の肩にあの女の手が触れ同時に山見の体が縮んでいった。
そのショックで一旦は掴みかけた銃を落としてしまう、
改めて掴もうにもドンドン縮む体ではもはや手に取る事は出来ない。
このまま彼女の手のひらの中に捉えられるのか?
いや彼女の性格からしたら邪魔者は直ちに消す、つまり潰されてしまうのだろう、
風前の灯火とはこういうことかと山見は思った。

だが山見は助かった。

女の手のひらに包み込まれそうになる寸前に銃声が鳴り響いたのである。
周囲から悲鳴があがった、
そして上着に包まれ倒れている女が撃たれたと思われたのだろう、
大勢の人がこちらに集まって来る。
山見は元の大きさに戻っていた。

「危なかった」

銃に手を掛けた山見はセーフティを解除していた。
無論女を撃つ為でもあったが万が一の場合に暴発させる意味合いもあった。
山見は銃と上着を掴むとそのまま逃走した、既に女も逃げたらしかった。


まんまと逃げられてしまったが山見はその女の匂いを憶えている、
追跡は続行中である。

とある公園のベンチで鼻孔をくすぐる数千数万の匂いを今も選別し続ける山見の姿があった。



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