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お前は光俺は影 [犬の犬吉]

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おいら犬の犬吉。
ある日、ダチのチロ公の案内で飯食いに出かけた。

「犬吉さん、おいしい店があるんですよ、へへへ」
チロ吉は確かここを右、いや次の角を右とややおぼつか無い調子で案内する、
探し回ってやっと着いた店は見た目普通の一軒家だった。
「最近は自宅をそのまま店にするのが密かに流行ってると聞く、
隠れた穴場ってやつだな」
おいらが入ろうとするとチロ吉が止める。
「犬吉さん、ここはただの家です…どうも途中で道を間違えちまったらしい」
そうして来た道を戻りつつまた探すが一向に見つからない。
腹も空いたが、随分歩いて疲れてきた。
「チロ吉、いつものところで食べようぜ」
結局馴染みの店で飯を食う。

「おかしいなぁ、どこで間違ったのか…兎に角安くて絶品の店なんです」
チロ吉は悔しそうに何度もそう言う。
実の所、チロ吉が言うおいしい店に案内された事は一度も無い。
いつも道が分からなくなり、今度、また今度と何度も挑戦し続けている。

そのチロ吉がぱったり姿を見せなくなった。

病気でもしているのだろうか、野犬狩りにでもあったのだろうか。
気ままな奴だったから、もしかしたらふらりと旅に出たのかも知れない。
その後おいらは、チロ吉を思い出す度、
あいつが案内しようとした店をさがしてぶらついた。

どこにあるのか検討も付かないが、なんとなくそのうち見つかる気がしている。



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