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途方に暮れた午後はヤバイゼ [ここ掘れ、トシハル]

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ある夕暮れの事です。
トシハルという名の若者が途方に暮れておりました。
そこに如何にも仙人の風貌の老人が現れ彼にこう尋ねました。
「お前は何を考えておる?」
トシハルは答えます、
「一文無しで食べる物にも窮する有様、どうしたものかと悩んでたところです」
すると老人は暫し考えた後、トシハルの影の頭の部分を杖で指し示して言いました。
「今夜、ここを掘って見るが良い。お前さんの悩みは解決するだろう」

そして深夜、疑いながらもトシハルは老人の言う通りに穴を掘りに来たのですが、
現場はカンカンに照明が焚かれ、大勢の人だかりでごった返しており大変驚きます。
よく見ると夕刻出合った老人の姿もありました。
彼はトシハルを見つけるとよう来たよう来たと言いながら本を手渡し言いました。

「実はわしらはドキュメンタリー番組を専門に作っている製作会社でのう、
おまえさんが一夜にして大金持ちになる姿を収録したいわけだ。
で、今渡したのが台本。夜間撮影で顔がしっかり映る様これからメイクするから、
その間にセリフをしっかり覚え込むんじゃぞ。
でもまあ、トチッても何度かやり直しも出来るし、もし夜が明けてしまっても、
ブルーフィルターで夜間にみせるから、その辺はリラックスして良いぞ、ワッハハ、
オ~イ、スタッフゥーーー!!」

渡された台本には大金を得てトシハル狂喜乱舞するとありました。
「…ドキュメンタリーじゃないじゃん…」

TVの美談は決して信じるまい、そう心に誓うトシハルでした。



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